2年3組乙女事情
「俺が高3の時、亜希帆が『スカートが可愛いからリア女に行きたい』って言い出してさ。
でも、リア女ってそこそこレベル高いから、亜希帆も勉強頑張らなきゃいけなかっただろ?」
「うん、そうだねぇ……」
「亜希帆の勉強を邪魔することになるから、それまでみたいに遊びには誘えない。
つまり、俺が亜希帆と一緒にいる方法は、亜希帆と一緒に受験勉強を頑張ることになるから……どうせ頑張るなら、亜希帆よりたくさん勉強して、兄らしく格好付けようと……」
「わかった!何となく続きはわかったからもういいよ……」
あたしの前だからふざけて『格好付けようと』なんて言ってるけど
お兄ちゃんのことだからたぶん、何か野心があって今の大学を受けることにしたんだと思う。
そこに行くための後押しをしたのが、あたしの志望高校だったっていうのはちょっとバカみたいでお兄ちゃんらしいけど。
「今から進路を完璧に考えてる奴もいると思う。だけど、亜希帆は亜希帆のペースで決めれば良いだろ。
俺の妹なんだから、決まる時はさっと決められるはずだ」
「それもそうかも。
本番に困らないように、今からちょっと真剣に考えてみれば良いってことだよね?」
「あぁ。家から通える範囲でな」
「え?」
「ついでに、女子大だとお兄ちゃんは安心だ」
「……何それ」
両腕を組みながら大げさに頷くお兄ちゃんを見て、あたしは思わず、小さく笑った。
これじゃあ、お兄ちゃんって言うよりお父さんだよ。
「ちなみに、最終的に自分の進路を決めるのは大学に入ってからだろ?
その辺りは、俺もまだ未定だ」
「そうなの?」
「亜希帆は俺の目の届く範囲にしか就職させないけどな」
「……はいはい」
やっぱり、お父さんだ……!