2年3組乙女事情
「ねぇ、進路希望に“お兄ちゃんのお嫁さん”って書いたら怒られるかな?」
「当たり前だろ。馬鹿か、お前は……」
考えるのに疲れたあたしは、お兄ちゃんの部屋を覗いて声をかけた。
呆れるお兄ちゃんに向かって、小さく笑う。
「今、ちょっと嬉しかったくせに」
「そんなことあるかよ」
「あるでしょ」
「……うるせぇ」
最後、声が小さくて聞こえなかったよ?
なんて、ちょっと意地悪なセリフを思い浮かべてから飲み込んだ。
何となく持ってきた、まだ名前しか書いてない進路調査表を顔の前まで持ち上げる。
両手でピシッと伸ばした、ちょっとしわのある白い紙の奥に
ベッドに寝転がりながら、面倒臭そうに雑誌を読むお兄ちゃんが見えた。
そんな光景が、ちょっと楽しい。
「ありがと、お兄ちゃん」
「え……?」