2年3組乙女事情
「ここは過去推量を表しています。故に、最後の部分は、“美しかったのだろう”と訳すことができます。
これは、先程の訳からもわかるでしょう」



正直なところ、全然わからない。



でもなんとなく、わかったフリをしてうんうんと頷いてみた。



「ただ、そうなると違和感に気づきませんか?では……日比谷さん」



ヤバい。


そう思った時には、もう遅かった。



無駄に頷いたのが間違いだったか。



私は、はぁ、と溜息を吐いて、先生を見た。



「違和感ってどういうことですか?」



時間稼ぎに質問を返す。


そして、必死で教科書に視線を落とした。



「そうですねぇ。
秋の夕暮れに対する筆者の考え方を読み取ることはできますか?」



なるほど。


言われて、歌の前半部分に目を向ける。



「……暗い」


「え? 何ですか?」



あたしの考えが当たっているかはわからない。



「これ、私の勝手なイメージなんですけど……」


「はい」


「筆者は、秋の夕暮れを“美しかっただろう”と言っているのに、前半のその情景に対する描写が暗くて、ネガティブなイメージを受けたんです」

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