2年3組乙女事情
「えぇっと、ニシブンシがオウジンで、ヒガシカンシがアシルツカイシュ……?」
「佐奈、それは西文氏が王仁で、東漢氏が阿知使主じゃないかな……?」
「へ?」
「カワチノフミウジがワニで、ヤマトノアヤウジがアチノオミって言いたいんだよね?」
あたしが開いていた日本史の問題集をシャーペンで指しながら、カズが言った。
「……これ、そんな風に読むの?」
「うん。
てか、さっき『今日の授業の復習だよ』って言ってたよね。何で読めないの?」
不思議そうに首を傾げるカズに、あたしは曖昧に笑いかけて問題集に視線を落とした。
今は、あたしの家でカズと一緒に勉強中。
学校は違うけど、自転車で行き来できる範囲に住むあたし達は、よく一緒に勉強してる。
もちろん、そんなあたし達の仲は親も公認。
カズが通ってるのもこの辺りで名の知れた男子校だから、何も問題はないし、むしろ喜ばれてる。