2年3組乙女事情
黒板に日付を書き始めたメタボ先生を見てから、あたしはこっそり、机の下でケータイを開いた。
メールの画面を開いて、短い文章を打つ。
送信ボタンをさっと押してから、先生の目を盗んで制服の胸ポケットにケータイを滑り込ませた。
授業が終わってメールを見たあの子は、どんな顔をするんだろう?
そう思ったら、何だかわくわくしてきた。
思わずゆるんだ頬を両手で押さえて、慌てて黒板に視線を移す。
……ダメだ、さっきみたいに授業に集中できる気がしない。
「じゃあ、教科書57ページを……日比谷、読んで」
「え? あ、はい……」
急いで教科書を開きながら、あたしはがたがたと音を鳴らしながら立ち上がった。
「6限目で退屈なのも、部活が忙しいのもわかるけど、授業もちゃんと受けろよー。文武両道って言うだろ。あれできると、先生受けも良いぞ」
……文武両道もギャップ萌えなのか。
ギャップ萌えの威力、恐るべし。
メタボ先生に「はい」っと小さく微笑んでから、あたしは教科書を読み始めた。
窓からは、相変わらず生ぬるい風が入り込んでくる。
今日はいつもより部活にも力が入りそうだな……
そんなことを考えながら、あたしは指定された部分を読み終わって、席に着いた。
「じゃあ……、続きを雨宮」
静かにすっと立ち上がった親友を見て、あたしはこっそり、静かに頬を緩めた。