2年3組乙女事情
「髪型、結構思い切ったのね」
「え……、あ、うん」
運転手さんにドアを開けてもらって車に乗り込んでしばらくしてから、舞花が何気なく口を開いた。
20人しかいない教室だもん。
舞花だって気付くに決まってる。
「あたし、結構良いと思うよ」
「そう? でも、先生にものすごく見られてたし……」
「あぁ、リア女生らしくないってこと? 気にしなくて良いんじゃない?自分が気に入ってれば」
さらっとそういう舞花は、何だかものすごく格好良い。
言いたいことをちゃんと言えなくて後悔してるあたしには、それがうらやましくて仕方がない。
舞花なら、こんな風に悩むことはないんだろうな……。
運転手さんがいるようなお嬢様だもん。
わがままって言い方をすると良くないけど
きっと周りのみんなが舞花の言うことを聞いてくれて、何一つ不自由ない生活をしてるんだと思う。
「でも私、あんまり気に入ってないの」
「え? そうなの?」
「うん。本当は、もう少し長めの、可愛いショートにしたくて……上手く言えないけど、ボブとショートの中間みたいな?
でも、気付いたらこうなってたんだよね。制服もだけど、私服ともあんまり合わないし……」
「確かに、難しい髪型かもしれないわね」
舞花は、そう言うとあたしの方をじっと見て考え込むような顔をした。
襟足とか、ボリュームとか、何かぶつぶつつぶやいてるけど、全部は聞き取れない。
「清夏、今日は何か予定ある?忙しい?」