2年3組乙女事情

「忙しくないよ。今日、予習もないし」


「じゃあ、ちょっと寄り道してから帰りましょ!」



舞花は、運転席に向かって声をかけた。



「どうせ話は聞いてたんでしょ? いつものところに寄ってくれない?」


「……かしこまりました。でも、知りませんよ?叱られたってしりませんからね」


「その時はあたしがしっかり謝ります!遅刻なんて初めてなんだから、許してほしいわ。
清夏、帰りは送ってあげられないから申し訳ないんだけど……ごめんね」



そう言ってあたしを見た舞花を見て、思わず小さく頷いた。


どういうことなのかよくわからないけど……これからどこかに行くってこと?



「これから、あたしがいつも使ってる美容院に行きましょ!
担当も若い女の人で優しいし、丁寧にカットしてくれるから大丈夫!」


「でも、お金もないし……」


「そんなの気にしなくても大丈夫よ!あたしもそこはいっつも無視だし」



……お嬢様ってすごい。


でもそれ、あたしが便乗しちゃっても平気なものなのかな?



ぐるぐる考えるあたしのことなんてお構いなしに、舞花は話を続けた。



「それより大事なのは、清夏がちゃんと自分の希望を伝えることよ。
元の髪の長さが違うから、最初に想像してたのとは違うものになっちゃうだろうけどね。自分が納得するまで、ちゃんと言いたいことを伝えて、向き合って来ないと。
髪なんてすぐに伸びちゃうし、小さいことかもしれないけど、自分の一部なんだもん。自分で気に入ってあげないともったいないわ」


「舞花は、自分の言いたいことをはっきり言うタイプだよね?あたしみたいなミスしないでしょ?
お金払わなくても美容院でカットしてもらえちゃうくらいだし、みんな舞花の言うこと何でも聞いてくれるんじゃない?」


「うーん……どうかしら?
親や周りがあたしに投資してくれる分のお金とかサービスとかは、本当にありがたいと思ってる。
でも、それだって全部が全部、あたしの好み通りなわけじゃないし、正直なところ、嫌なものが多いの」


「そうなの?」
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