2年3組乙女事情
「清夏、また髪切ったんだ」


「そうなの!どう?」


「うーん……良いんじゃない?今度は気に入ってるみたいだし」



次の日の朝。


いつものように、七瀬があたしに話しかけてきた。



あれから手早くあたしのことを説明した舞花は、「またね」なんて言ってするっと車に引き返して行った。



律儀に後部座席のドアを開けたり閉めたりして、それを眺めてたあたしにまでお辞儀をしてくれた運転手さんが、ちょっと格好良く見えたんだよね。



あたしのせいで、舞花はもちろんだけど、あの運転手さんも怒られるんじゃないかな……?



朝は七瀬に迷惑かけて

舞花とその運転手さんにも迷惑かけて

高2にもなって何やってるんだって自分に言い聞かせたら、美容師さんの前で躊躇しようなんて気持ちも、思考回路も


全部取っ払えた気がした。



「若い女の人なんだけど、すごく丁寧な美容師さんでね。可愛い感じのショートにするにはどうしたら良いかって、一緒にずっと悩んでくれたの。
上の方は短かったけど、サイドにボリュームあったし、襟足も長めだったから何とかなったんだって」


「確かに、髪は短くなったけど、全体的に丸くなったよね」


「昨日はひし形だったからね」


「ひし形はない」



そう言い切った七瀬の笑顔が、何となく嬉しい。



やっぱり、心配させてたんだな……――――



24時間前に戻れるなら、全力であたしに注意したいかも。



「あ、これ。あたしからプレゼント」


「へ?」
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