2年3組乙女事情
「仕方がないでしょ。苦手なんだから」


「他の科目では満点に限りなく近い点数並べてるくせに……。そろそろわざとだって思われてもおかしくないぞ」



呆れたように溜息を吐き出した瑤を、くるっと振り返る。



放課後で他の先生達がみんな部活に行ってるかからか、社会科演習室にはコイツとあたししかいない。


ヤバい。

この状況だと、気が抜ける。



「でも、中間とか期末とかだけじゃなくて、模試でもずっと悪いし、わざとだと思われることはないんじゃない?」


「その台詞、学年2位の肩書が泣くぞ。
お前の成績を他の生徒が事細かに知ってるわけがないだろ。
しかも、教員が注目してる模試の成績は、少しずつ上がってきたし?」


「それは、テストの後に毎回誰かさんが自分のクラスにだけ特別課題を出すからじゃない?
1年の時からお世話になってるあたしは、おかげ様で叩き込まれた部分だけは少しマシになりましたよ」


「それは良かった。……お前の成績データ、折れ線グラフにでもまとめてみるか」



顎に手を当ててから、ノートパソコンに手をかける瑤に駆け寄った。


パソコンを開こうとした瑤の右手に、思わず自分の手をばしっと重ねる。



「ちょっと、冗談言わないで!何のいじめ!?」


「いじめじゃないだろ。これも愛情表現の1つだって」


「どこが! 意味わかんないから!」


「眉間にしわ寄せてても可愛いって、相当な技だよな」



予想以上に近い位置から見上げられて、あたしは思わず後ろに飛びのいた。


そんなあたしを見て、瑤が小さく笑う。



「あー……俺、美海の扱いに関しては世界一上手いって自信あるわ」



背もたれに体を預けながら伸びをするコイツは、ちょっと暢気すきじゃないだろうか。



「あのさ、変な噂が流れてるの、知ってる?」


「噂?」
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