2年3組乙女事情
「ありすみたいに、頭も良くて、気の利く可愛い子がお好みで?」
窓から差し込む夕日のせいで、瑤の表情はよく見えない。
見えるのは、うつむき加減で何かを考える、瑤の横顔のシルエットだけ。
でも、たぶん……
続く言葉は、何となくわかる。
「俺には美海くらいがちょうど良いんだよ。それくらいわかるだろ」
ほらね、やっぱりそう言う。
「くらいって……あたしに失礼じゃない?
面倒でも迷惑でも、瑤の仕事増やしてでも、点数上がるまではずっとここに通ってあげるんだから」
微笑むあたしに、瑤は呆れたように大きく笑った。
「お前、相当馬鹿だな」
「誰かさんの馬鹿がうつったの」
瑤は、ぎしっと立ち上がるとあたしの正面に立った。
「こうなったら、点数が下がらないようにずっと面倒見てやるよ」
頭にがっしりと乗せられた手のひらに、思わず肩をすくめる。
微妙な関係のあたし達だけど
だからこそ、なのかな?
何だかその、小さな行動が嬉しくて……――――
思わず笑ったその先。
視線を合わせなくても、何となく……
瑤が、馬鹿みたいに微笑むのがわかった。
〜14番 峯岸美海 END〜