2年3組乙女事情

「実涼、反対側」


「え? うん」



投げ捨てるみたいにそう言われて、急いで右手を差し出した。



解放された左手に目を移す。



1回しか塗ってないせいでまだ薄いけど、歪んでもはみ出してもないマニキュアは、確かに私の1時間分よりも綺麗だ。



筆……翼は筆って言ったけど、本当にコレって筆かな?


まぁいっか。



やっぱり、普段から絵を描いてるせいか、筆を使うのが上手いのかもしれない。



「つーか、こんなことするよりもダイエットでもした方がよっぽど女子力ってヤツが上がるんじゃね?
まぁ、お前がやっても無駄な努力かもしれねぇけど」


「……ダイエットならしてるもん。これでも少し痩せたし」


「少しじゃダメだろ。テレビ見てみろ。あれが理想で、普通だ」



軽く視線で指されて、流れていたCMを見た。



高いヒールにスキニーを格好良く着こなすモデルさんのCMは最近の話題で……

いろんなところで大きなポスターも見かける。



……それと比べるなんて、ダメに決まってる。

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