2年3組乙女事情
「ねぇ、それよりさ。何でこんなにも上手なの?初めてじゃないの?」



見た目がこんなにも見た目が派手なんだもん。


女の子の1人や2人、たぶらかしてたっておかしくない。



「初めてに決まってるだろ、こんなん。他でもやってたらキモい」


「それは、ネイルアートを職業にしてる人に失礼なんじゃない?」


「それとこれとは別だろ」



明らかに面倒臭そうな顔をした翼が、呟きながら手を動かす。



順調に制服のスカートと同じピンク色に染まってく爪を見ると、何となく照れくさい気がした。



「“芸術家”イコール“おしとやか”ってイメージがあるけど、翼は真逆だよね」


「どーゆー意味だ?」


「そのまま」



テレビに出てる書道家さんとか、ピアノが上手な芽依ちゃんとか。


思い付く人を想像してみるけど、やっぱり翼とはかけ離れてる気がする。



“おしとやか”が“芸術家”の条件ってわけじゃないのかな?



「“おしとやか”な人間ばっかなら、そうじゃない芸術家が生まれないと流行らないだろ。
人の真似してるだけじゃつまんねぇし」


「そういうもの?」


「あぁ。芸術なんて、特にそーだろ。ほら、もう1回左手」



小さく溜息を落としながら、さっきまで放置されていた左手を差し出す。



鉛筆とか筆とか。


1回何かを持ち始めたら、納得するまでそれを放さないのは小さい頃からの翼のクセ。



それがわかってるから、これを拒否することだっていつの間にかなくなってる。



「これ、他の色も使うからな」
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