2年3組乙女事情
「え? うん。それは良いけど……」



私が言い切る前に、翼は机に並べてあった他のマニキュアに視線を移した。



1つずつ手に取って眺めながら、じっくり色を選んでる。



……せめて、この間だけでも手を放してほしいんだけど。



何となくだけど、翼の左手で軽く支えられたままの左手がアツい。


左手だけ、変に自分から切り離されちゃったみたいな。



全体的にしわしわしてるし


小学生の頃に突き指をしたせいで薬指は曲がってるし


そういえば、右手の中指なんてペンの持ちすぎで爪が斜めに生えてるし。



……この状況にもだけど、自分の手をじっくり見られてることにも恥ずかしくなってきちゃった。



しかも、翼が“普通”って言う体型からかけ離れてる私の指は、かなり太いしさ。



「これだな……」



次に使うマニキュアを選び終わった翼が、私に向き直る。



「次、右」


「はいはい」



……右手にするんだったら、左手は放してくれてても良かったじゃん。



下を向いてるせいで、翼の顔はもう見えない。


その代わりに、くるくるした髪が目に入る。



くるくるって言ったら、怒られそうだけど……。



中学までとは違うその髪を見てたら、何となくそわそわして……


私は思わず、付けっぱなしのテレビの方に首を傾けた。
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