2年3組乙女事情
「何か、絵に描いたようなダメ人間なんだけど。ウチの“父親”」
「そう?いつも笑顔で優しそうじゃん」
「優しいだけじゃ生きていけないよ!何でお母さんは聡さんと結婚したんだろ……」
聡さんが無職になった次の日。
下校中、侑[いく]に話を聞いてもらいながら私は溜息を吐いた。
「うーん、それはわかんないけど。
七瀬のお母さんってキャリアウーマンって感じで格好良いし、生活がどうこうとかじゃなくて別の部分でお父さんに惹かれたんじゃない?
それに、会社をクビになったのなんて初めてなんでしょ?確かにダメだけど、それだけでダメ人間なんて言ったら可哀想」
「そう?」
私は、何となく足元の石を軽く蹴った。
不格好にガタガタ転がる石に、少しイライラする。
リア女の創立記念日が過ぎた辺りからかな?
一気に下がった気温に耐えられなくなった私は、昨日からマフラーを巻いて学校に通うようになった。
歩道に舞った黄色い葉っぱが、もうすぐ冬になるんだってことを私に教えてくれてる気もする。
「そうだよ。たぶん七瀬は、初めにお父さんに標準以下だって印象を持っちゃったんだよ。
お母さんより年下だから頼れなさそうとか、苗字が“百瀬”だから気に入らないとか……。小さな理由で」
「でも、苗字のことは結構なことなんだよ!苗字も名前も“数字+瀬”だから、中学の時はからかわれたし」
「それは致命的だね。
そういうマイナスを全部抱えてるから、それなりに素敵なことがあっても、お父さんの印象は七瀬の標準以上にならない。
逆に今回みたいに良くないことがあると、お父さんの印象がガクッと下がるんじゃない?」
「うーん、それはあるかも……」
「そう思うと、お父さんが不憫だけど」