2年3組乙女事情
肩の辺りでふわっと髪を揺らしながら、侑がにやっとしながら私を見た。
私よりも少し高い位置からの視線が、少し気に入らない。
「そう?」
「まぁ、あたしは会社をクビになるような人は勘弁だし」
……さっきまでの弁護はどこに行ったんだろう。
思わず足を止めた私を気にする様子もなく、侑がそのまま歩き続ける。
「あ、ちょっと待ってよ!」
ちょっと大人っぽいような、そんなこともないような……
そんな高校生らしさでいっぱいの友人は、さっきの侑の言葉を借りれば、確実に標準以上だ。
振り返ってにっこり微笑んだ侑を軽く追いかけながら
私はさっきまでの話を頭の中にしまい込んだ。
「七瀬ちゃん、夕飯できたから食べに来て」
「わかった」
遠慮がちにノックされたドアから、聡さんがひょいっと顔を覗かせる。
聡さんが家事を全部担当するようになってからの日課になったこの光景ももう5回目。
予習のために開いていたノートから顔を上げて、私は軽く頷いた。
「それじゃあ、待ってるよ」
……待ってなくて良いんだけど。