2年3組乙女事情
聞き覚えのある声が聞こえて、思わず振り返る。



「あ……」



ぴんぴん跳ねた短い髪が印象的なその男の子。



一瞬誰だかわからなかったけど、声と記憶から考えて、中学の同級生で間違いないと思う。



「“百瀬”?私が知ってるのは、“加藤”だったけど……」



あ、それ言っちゃうんだ。



隣にいたのは、もしかしたら小学校の同級生なのかな?


同じ高校の制服を着た4人組の中で私に反応したのは2人。



あとの2人にとっても、私達にとっても盛り上がりに欠ける話を振ってくる2人に、思わず顔の筋肉が固まりそうになる。



「隣は……あ、新しいお父さん?」



“新しい”って何だ。



新しくなったのなんてもう何年も前のことだし、その前だってこの2人に会う何年も前に手放してる。



「七瀬ちゃんのお友達? 初めまして」



明らかに不機嫌になった私を気遣ってか、聡さんが代わりに口を開いた。



いつもの笑顔を保った聡さんが、何だかすごく大人に見える。



「へぇー、優しそうな人!一緒に帰るなんて超仲良いんだね」


「そう見える? 嬉しいなぁ」



にっこり笑う聡さんが、嬉しそうに答える。



本当に嬉しいのか、話を合わせようとしてくれてるからなのか、そこまではわからない。



わからないけど……
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