2年3組乙女事情
呼び止める聡さんを振り切って、とにかく足を進める。
何で私は、こんなにもいらいらして、もやもやして、どうしようもない気持ちになってるんだろう。
聡さんが気に入らないから?
昔の同級生に会ったから?
聡さんとの関係が上手くいってない気がするから?
……それとも、そう感じるのに何もできない自分に気付いたことを後ろめたくなったから?
どうしても止まらない混乱した気持ちは、私を解放してくれそうにない。
それを振り切りたくて、必至で歩いた。
ちょうど青になった信号が視界に入って、何人かの人が横断歩道を渡り始める。
その団体について行きたくて、私は歩くスピードを速めて歩道に足を踏み出した。
「七瀬ちゃんっ!危ないっ!!」
後ろからさっきまでと違う少し尖った声が聞こえて、何となく振り返る。
「え?」
でもその時にはもう、私の体は少しだけ宙に浮いていた。
そのままコンクリートに叩き付けられて、衝撃が体に走る。
「だ、大丈夫ですか!?」
どこからか向けられた声は、私へのものじゃなかった。
もちろんそれもあったかもしれない。
でも……
私の何倍も重傷そうな人間が、ちょうど1メートルくらい離れた所に倒れてる。
「え、何で……?」