2年3組乙女事情
「……何で死んでないわけ?」
「だって嫌でしょ。死ネタなんて」
「……いっそ、死んでくれた方がスッキリするわ!」
「それはないだろー」
へらへらと笑いながら言う聡さんを見て、思わず大きなため息を落とした。
病院に来てからどのくらい経ったんだろう。
見た目とは違って中身はどうにもなってなかったせいだと思う。
聡さんは想像の何倍も元気で、それを聞いたお母さんは仕事が落ち着いてから来るって言ってた。
ベッドに寝る聡さんの隣。
イスに座ったまま、ゆっくりと視線を聡さんに合わせた。
頭とか腕とかにぐるぐる巻かれた包帯とネットはちょっと痛々しい。
でも、そんなことを感じさせないくらいにへらへら笑うこの人は……
たぶん、ただの阿呆だ。
「でも、七瀬ちゃんが無事で良かった。
あのまま七瀬ちゃんに怪我でもさせちゃってたら、お母さんに嫌われそうだし」
「そんなわけないでしょ。何、冗談言ってるの」
「冗談じゃないよ、本気。何だかんだ言って、血の繋がりって大切みたいだし。
これでもね、結構いろいろ気にしてるんだよ。僕はどう考えたってお母さんより頼りないし、七瀬ちゃんとは戸籍でしか繋がってないわけだし。
名前のせいで迷惑をかけたことも、知ってるしね」
申し訳なさそうなのに、聡さんは笑顔を崩す気配がない。
でも、そのおかげで保たれてる空気が、今はすごく有難い。
「確かに、聡さんは頼りないし、正直、反面教師な部分もあるよ。
でも、血の繋がり意外にも大切な絆ってあるでしょ?」