2年3組乙女事情
「木原警部補、状況を説明して下さい」
はきはきとした声で指示を受けると、着ていた黒いジャケットの襟をびしっと整える音が響いた。
「はい。時刻は午後5時35分。場所は、椿駅構内のトイレ前。容疑者である井上律は、同年代と思われる女子と腕を組んでいたようです」
「わかった。容疑者と親交の深かった人物は?」
「はい。今年の8月頃からカメリア女子学院高校の山村瑛梨奈と親交があるようです。
山村が相手にしていないにも関わらず、毎日のようにメールを送信し、親しい仲になろうと……」
「えぇー!? そんなにも前から!?」
「そうなの!びっくりだよね! 私も、彰宏に聞くまで知らなかったもん」
ジュースを乗せたお盆を持ったまま、あたしはしばらくそんな様子を観察していた。
「……何やってるのよ。あんた達」
「何って、警察ごっこだよ!ね、亜希帆ちゃん?」
「……デジャヴ?」
思わず溜息を吐いたあたしを見て、果歩ちゃんと亜希帆ちゃんの動きが止まる。
「そんなところでぼーっとしてないで、早く話聞かせてよ!今日の主役は瑛梨奈ちゃんなんだよ?」
「主役って……どっちかって言うと、あたしが脇役だと思うんだけど」
苦笑いをしながらそう言って、持ってきたジュースを机に並べる。
何かがある度にあたしの部屋に集まる習慣ができたのは、いつだったかな?
こうやってあたしが飲み物を取りに行ってる間に、今みたいな寸劇が始まってることも珍しくない。
その度に固まらなきゃいけないあたしの身にもなってほしいんだけど……。