2年3組乙女事情
「そんなことないよ!
ずーっと瑛梨奈ちゃんに気があるって言ってたのに、別の女の子と2人っきりで、腕組んで!完全にその子が割り込み!」


「てゆーか、トイレって何?」


「それはあたしも思った。トイレって何?」



同じ疑問に行き着いたあたし達は、思わず顔を見合わせて笑った。



井上律は、彰宏くんのクラスメイトで友達だ。



夏休みに入る前、下校中にたまたま彰宏くんと一緒にいる彼に会ったのが最初だと思う。



それも確か、椿駅のホームだった。



初めて見た井上律の印象は、金に近いくらいのふわふわした髪と、だるっとした制服のカッターシャツ。


それだけ。



隣にいた爽やか青年・彰宏くんとのアンバランスさが、少し奇妙だった。



しかも、途中で女の子から電話がかかってきて、駅をすぐに離れていった気がする。



だからその時に思ったんだ。


コイツ、遊んでるな……て。



そんな井上律から初めてメールが来たのは、たぶんそれから1週間くらい経った頃だと思う。



アドレスは彰宏くんから聞いたらしい。



ほぼ毎日のように送られてくるメールは、軽い雑談か遊びの誘いがほとんど。



別に遊ぶくらい良いじゃないかって思うでしょ?



でも、あの金髪だるだる人間と一緒にいたら「リア女の品格が落ちてる!」ってヒステリックになった近所のおばさんあたりから学校へ連絡がいくはずだ。



そうなったらあたしが困る。



伝統がある分、リア女って近所のおじさんとかおばさんとかにも気に入られてるんだよね。
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