2年3組乙女事情
「カ……、ズ?」


不安になって顔を上げると、カズがふっ、と笑ってから話しだした。


「ありすちゃんとは別に何もないけど?
本当に今日久しぶりに会ったし。
メアドだって知らないんだよ?」


「……う、うん」


「ありすちゃんとは同じ中学でさ、3年間クラスが一緒だったんだよ。
委員会が一緒になったこともあったし、結構すんなり仲良くなって。
いい子でしょ?」


あたしの気持ちを悟ったのか、カズは落ち着いた声で言った。


その表情は穏やかで、とても嘘を言っているようには見えない。


だから、本当に雨宮ありすとは何もないんだと思う。


でもね……。


「あの子とはあんまりしゃべんないから、わかんないよ。
派手だし、話しにくい」


俯いて小さくそう言うと、カズは少し笑ってから口を開いた。


「あぁ。それはちょっと違うよ。
ありすちゃんは母子家庭でさ、いろいろ大変なんだって。
中学の頃から、近所のおばさんの店で軽いバイトみたいなことを特別にやらせてもらってたらしいよ。
だから、その職場でお客さんから馬鹿にされないように、少し大人びた格好とかしてたみたい」


「えっ……」


「リア女に入ったのも、学年1位の子は授業料が全額免除になるから……だって。
ありすちゃん、ああ見えてかなりの勉強家だよ。
しかも、同情されるのは嫌いだってそういうのは全部隠してるし」
< 23 / 278 >

この作品をシェア

pagetop