2年3組乙女事情
「何ですか? 穂高先生」


「ん? あぁ、他の先生には話してないけど、さっきの金髪パーマ、山村の知り合いだろ?」


「金髪パーマって……」


「名前聞いてないからな。何かアイツ、山村とちゃんと話したいんだとさ。
とりあえず、言い分だけはじっくり問い詰めてやったら?」



穂高先生が、にっこりと微笑みながらそう言った。



あー……隣で亜希帆ちゃんがうっとりしてるのがわかる。


穂高先生若いから、割と人気あるんだよね。



「金髪パーマと一緒なら、良いバカができると思うぞ。成功すれば」


「……良いバカ?」


「ま、そーゆーことだから。もう暗いから、気を付けて帰れよ」



首を傾げるあたし達に背を向けて、先生が校舎の奥へ戻って行った。


階段の方へ行ったから、たぶん演習室にでも行くんだろう。



「良いバカって何?」


「わかんない」


「でも、あのちょっと謎なとこも格好良いよね」



あたしは、思わず果歩ちゃんと顔を見合わせた。



「帰ろっか。暗いし」


「え?ちょっと待ってよ!2人とも!」



みんなで笑い合いながら校舎を出た。


暗くなった校門には、何年前だかよくわからない卒業記念品のおしゃれな街灯が似合ってる。



ここに何時間か前まで井上律がいたって思うと、何だか変な感じだ。



この校門に井上律は……似合わなすぎでしょ。



思い出して小さく笑いながら、あたしはそのまま足を進めた。
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