2年3組乙女事情
「瑛梨奈ちゃんっ!」


「……井上律」



呼び止められて振り返ると、そこには井上律がいた。



教室から見た時と変わらない、だるっとした制服に派手な金髪パーマは、ここ、椿駅のホームでも十分目立ってる。



「何でこんなところに?あたし、今からこの電車に乗るの。次の電車まで待てないから、引き止めないでくれる?」


「引き止めないけど、俺も一緒に乗る」


「は?」



何で井上律があたしについてくるわけ?


意味が分からなくて、思わず睨みつける。



でも、あたしの小さな攻撃なんて気にもならないのか、ずかずかと近づいてきた井上律は「行くぞ」と言ってあたしの腕をつかんで電車に乗り込んだ。



「ちょっとっ!」



すぐに、電車のドアがすーっと閉まる。



空いてる席もいくつかある。



それでも、井上律はドアの前に立ったまま、あたしの手首をつかんだまま動かなかった。



しかもじっと窓の外を見たままで、あたしに構うようなオーラなんて微塵も出してない。



呼び止めたのは井上律なのに……。


一体、何だって言うの?
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