2年3組乙女事情

穂高先生は、井上律とちゃんと話すようにって言ってた。



でも、これじゃあ話すも何もない。



こんな無愛想な奴と一緒に、何で電車に乗らなきゃいけないわけ?



『次は……』



車内に響くアナウンスが、最寄駅に近づいたことを教えてくれる。



「あたし、次の駅で降りなきゃなんだけど」



窓の外を見つめたままの井上律に、窓の外に視線を移しながら言った。


窓越しにちらっとあたしに視線を送った井上律が、そっと口を開く。



「……じゃあ、俺も降りる」


「は? ちょっと、何で!?」



思わず直接見上げて聞き返したけど、それに対する返事は聞こえる気配がない。



またさっきの状態に戻ってるし……。



小さく落ちたあたしの溜息と、目の前のドアが開く音が重なる。



「降りるぞ」



そう言って、ドアが開いた瞬間に井上律が足を踏み出した。


手首から引きずられて、少し体が傾く。



それでもずかずかと歩いていく井上律の金髪パーマ……


一応、茶髪パーマを見ながら、あたしは静かに息を吐き出した。
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