2年3組乙女事情
「さすがにこれは初めてだわ……」


「え?」


「何でもない。こっちの話」



目の前に座った井上律に軽く手のひらを見せて呟いて、小さく息を吐いた。



腕を引かれて電車を出たのが20分前。


家はどっちかと聞かれたのがその1分後。


あたしにとっての最寄駅が、井上律にとってはただの通過駅だとわかったのが15分前。


家について、何故かあたしの部屋に井上律をあげちゃったのが1分前。



果歩ちゃんと亜希帆ちゃんが来る時と違って、ジュースを出してないのはこの状況が全く読めないから。



てゆーか、何でこんなことしてるんだろう……。



あたしの部屋は確かによくたまり場になってるけど、これは何か……違うと思う。



「瑛梨奈ちゃん、俺の話聞いてくれる?メールも電話も学校もダメだったから、直接来た」


「ダメってわかってるなら来なくても良いのに」


「ダメってわかってるけどダメにしたくないから来たんだろ」



何考えてるの、コイツ……――――



まっすぐした視線を送ってくる井上律の視線が、少し痛い。



「そんなこと言うなら、何でこの前女の子と一緒にいたのよ?きっちり腕まで組んじゃって……」
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