2年3組乙女事情

「ねぇ、あのイケメン誰? 校門のとこ」


「さぁ?」


「この前の人も格好良かったけど、あの人も何か真面目そうで良いよね!
どうやったらみんな、あんなイケメンにお迎えに来てもらえるの!?ずるいんだけど」


「……それ、和君が聞いたら泣くよ?」



最後の授業とホームルームの間。

少しがやがやし始めた教室に、榎本さんと雨宮さんの会話が響いた。



いつか聞いたことのある会話な気がするのは、気のせいじゃない。



あたしは、小さく溜息を吐きながら教科書を鞄にしまい込んだ。



「瑛梨奈ちゃん!校門のところにいるイケメンって、たぶん……てゆーか、間違いなく律君なんだけど!」


「……デジャヴ」


「へ?」


「何でもない、こっちの話」



小さく笑うあたしに、果歩ちゃんが焦ったような顔で話を続けた。



「でも、校門に立ってる子の髪、真っ黒なの。間違ってもトイレに女の子と入らない感じの黒髪。
瑛梨奈ちゃん、何か知ってる?」



気付いたら、目の前には亜希帆ちゃんまで来ていて……


2人そろって、あたしの顔を興味津々で見つめてくる。



「染めてくれって言われて、あたしが染めたの。昨日」


「瑛梨奈ちゃんのために?」


「愛の力……みたいな感じ?」



そろって首を傾げた2人に会わせて、あたしも首を傾ける。



愛の力ね……

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