2年3組乙女事情
「まぁ……、そうだね。あ!でも、いじめみたいなデリケートな感じじゃないから勘違いしないでね」


「じゃあ何で? そんなんじゃ青春なんて味わえるわけないじゃない」


「まぁ、そうだね……。だからかも」



ぼそっと落とした言葉に、赤いフレームの奥が揺れた。


にっこり笑ったあたしに、静かに部長が話を切り出す。



「どういうこと?」

「受験の時、あたしはリア女を志望してなかったの」


「へ?」



いきなり始まった受験の話に、部長が首を傾げた。


視界の奥で、杉野さんが本から視線を外したのが見える。



「リア女って、ウチから2時間かかるの。
ウチ、すっごい田舎でさ。中学なんて1クラスしかなかったの。クラス替えもないから、みんな結構仲も良くって」


「初めて聞いた」


「だからね、本当は地元の高校に行くつもりだったの。公立の、そんなにレベルの高くないとこ。
そうすれば中学のみんなと一緒に騒いでいられたし、そんな高校生活が良いなって思ってた」


「じゃあ、そこに行けば良かったのに。ここに受かったってことは、合格したんでしょ?」



当たり前でしょ?


そんなニュアンスの部長の言葉に、小さく苦笑いをする。



「したよ」


「じゃあ……」


「でも、リア女にも受かっちゃったの。そこよりも、ずーっとレベルも評判も高いリア女にね」



ゆっくりと微笑んでから、あたしはできるだけ明るい声を作った。



わざとらしく人差し指を立てて、顔の横に運ぶ。



「さて、問題です! 部長が親だったら、あたしをどっちの高校に進学させる?
地元のちょっとおバカな高校と、堂々と余裕で名前を自慢できちゃうリア女」
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