2年3組乙女事情
「じゃあね、侑」
「うん。また月曜日に」
七瀬に軽く手を振って、あたしは椿駅を目指した。
まだ5時なのに、外はもうすっかり真っ暗で……
当たり前のように、吐き出した息が白く染まる。
ふと、道の反対側の歩道に目を向けた。
クリスマスが近くなると、あの辺りには綺麗なツリーが飾られるから。
この道を通る時って、何となくあの場所に目を向けちゃうんだよね。
いつもの習慣でぼーっとそのツリーを眺めてたあたしは、ぴたっと足を止めた。
「な、んで……?」
見間違いなんかじゃない。
あの青なのか緑なのかよくわかんないレザーのジャケット……――――
顔までは見えないけど、隣にいる女の子は、何となく、黒いエナメルのハイヒールを履いてるような気がする。
「……っ!」
思わず息が詰まりそうになって、がばっと視線を足元に落とす。
ダメだ……――――
想像してたより、ダメージが大きかったみたい。
あたしは、思わず走り出した。