2年3組乙女事情

1年近くも経ってたんだ。



彼の部屋のテリトリーは侵さないように気を付けてたけど、あたしの心のテリトリーのことなんて、考えてもいなかった……。



寂しさなのか、喪失感なのか、何だかもう、良くはわからない。


好きとか、嫌いとか、そういうのとも次元が違う気がする。



がむしゃらに走りすぎたせいだと思う。



人にぶつかりそうになったあたしは、バランスを崩しながら足を止めた。



このイルミネーションって……


クリスマスまで、まだ何日あると思ってるんだろう?



さっき見たツリーだけじゃない。



気付いたら辿り付いてた、この椿駅の前も、たくさんの光でいっぱいだった。



それに、気のせいかな?



手をつないで歩くカップルが、いつもよりたくさんいるような気がする……。



「って、何考えてるんだろ。あたし……」



小さく呟いて、そっと空を見上げた。



イルミネーションが明るすぎるせいだと思う。


空には星なんて、1つも浮かんでない。



「こんばんは! 最近、美容室には行きました?」


「え?」

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