2年3組乙女事情
「あ、ボクの名前です。指名、してくれ……ますよね?」
「もちろんですっ」
服部さん、ね。
にっこりと笑い合ってから、他の人にパンフレットを配りに行く服部さんの背中を見送った。
きらきらした駅前のイルミネーションで、ヒヨコみたいな金髪が綺麗に染まる。
さっきまで、クリスマス前のきらきらとした駅前にはカップルとか、楽しそうに騒ぐ人達しかいないんだと思ってた。
でもよく見ると、服部さんみたいにパンフレットを配ったり、スーツで駆け抜けていく人もたくさんいる。
みんながみんな、単純に笑ってるわけじゃないんだ……――――
浮気されちゃったり、別れたばっかりの彼氏をたまたま見つけちゃったり
そんなことばっかり一気に起こるから、自分の思考回路もそこに集中しちゃってた。
……よく考えたら、こんなのもったいなさすぎるじゃない?
「失恋で髪を切るって、アリなのかも」
自分の一部になってた恋を、しっかり自分から切り離すきっかけとして。
切り離した上で、その穴を埋める何かを探そうって、前向きになるきっかけとして。
「あと2時間ね……。どっかで明日の予習でもするかぁ」