2年3組乙女事情

「何で、そんな風に誘ってくれるの?わたし、ほとんど学校にもいないし、わざわざ話しかけてくれるの、面倒じゃない?」



不安になってそう聞くと、少しびっくりしたような 表情をしてから横岩さんは口を開いた。



「面倒じゃないし、仮に面倒だとしても、あたしは同じことを言ったよ。面倒だからって誰にも話しかけない方があたしにとっては損害だから。大損だよ!」


「大損?」


「高校生活は1回だけなんだよ?いろんな人と話して、いろんなものを見て時間を使わないと!あたしもね、最近それに気づいて、こうやって部長とか、和田さんとかにも自分から話しかけるようにしたの」


「そうそう。この子、文芸部に入ってまだ1ヶ月くらいだから」



部長さんは、わざと顔を歪めながら言った。



にっこりと微笑む横岩さんを見て、少し嬉しくなる。


そんな風に考える人がいたんだって。



仕事の時は別にして、こうやって学校にいる時に誰ともコミュニケーションを取ろうとしてなかったわたしの行動は、横岩さんの言う通り、損なことだったのかもしれない。



もったいない、ね。



青春を勉強しようと思ってみんなが開いてくれる雑誌のモデルが、青春を全く知らないなんて、ちょっと馬鹿みたいな話かもしれないし。



……まぁ、この雑誌を青春を勉強するために開く人なんて、横岩さんくらいだとは思うんだけど。



「ねぇ、このお弁当箱、ちょっと持ってもらっていい?」
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