2年3組乙女事情
教室でも、案の定あたしは注目の的だった。


廊下を歩いても注目されたし、授業の度に先生はこっちを見て目を見開いた。



こんな反応を、入学当時から何度見ただろう。



入学してから1年と半月。


どんどん進化していくリア女らしくないあたしの身なりに比例するように、あたしのまわりには人が来なくなった。



でも、別にあんな奴らはどうでもいい。


嫌なら近づいてくれなくていい。



いろいろと説明しなくていいだけ、気が楽だし。



それに、自分の道楽のためだけにしか生きていない人に同情されたくもない。



祐貴だってそう。


あたしの味方だって祐貴の言葉を信じてたけど、結局それも嘘だったんだと思う。



まぁ、高校内であたしに話し掛けなくなった祐貴を、あたしは責めないけど……。



家に帰れば昔と変わらない対応をしてくれる祐貴を見たら、そんなことはできない。




だから、本当に嫌な人間なのは、そんな祐貴を利用してピアスの穴を開けた、あたしなのかもしれない。





授業が終わった頃、居心地の悪い教室にはあたし以外だれもいなくなった。


「帰るか……」


教科書と参考書のつまった黒い合皮の指定鞄を持って、立ち上がる。


「ねぇ、ちょっと時間いい?」
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