2年3組乙女事情
「それに、パイナップルの食べ放題でしょー」


「う、うん」


「水族館も楽しみよねー!」



ママが入って来てもお構いなしに話す舞花を見て、私はもう何もする気になれなかった。


舞花はきっと、私のために頑張ってくれてるんだと思う。



でも、私にはそのやり方が全然わからないんだもん。



焦って固まる私の横に、ママがすっ、と膝を下ろした。



「もうすぐ修学旅行なの?」



静かにそう言うママの表情はわからない。



「そうなんですよ!
もうすぐ班決めがあって……私、芽依と一緒の班になりたいな、って思ってるんです」


「あら、そう……」


「中学の時は行けませんでしたからね……。
高校は修学旅行に行ける最後のチャンスですし、もちろん、芽依も参加するんですよね?
ね?芽依?」


「へ?あー……っと……」



いきなりのことで何を言えば良いのかわからなくて、思わず口ごもった。


ママと舞花に交互に視線を送る。


バカバカしいと相手にしてない様子のママと
私に行くって言ってほしいって顔をしてる舞花。


人が表してるのは、この先に感じられる楽しみと、今味わえる楽しみ。


正直、私にはどっちのことも大切で、どっちのことも裏切れない。


優柔不断って言われたら、それでおしまいだけど……

どうすることもできないよ。



「……はぁ」
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