2年3組乙女事情
きっとママは怒鳴るんだろうな、とか。

きっとママは同時に悲しい顔をするんだろうな、とか。


いろんな考えが頭をよぎるけど……消える。



言葉を一気に吐き出したら、気持ちはものすごくラクになって……

私は言葉にした後も、ママを見ることができなかった。



「芽依、顔を上げなさい。芽依が『行きたい』って言うのはわかってたわよ。知ってて聞いたんだから、叱ろうなんて思ってない」

「え?」

「知ってたって、どーゆーことですか?」



びっくりして言葉の出なくなった私の代わりに、舞花がママに尋ねた。



「実はね……」



そう言うと、ママは近くの棚を開けた。


そして、本がたくさん詰まっているはずの棚から、何かを取り出した。


棒にしては短いし、布にしてはしっかりしてる。



何かわからなくて首を傾げると、ママはにっこりと笑った。



「これ、知ってる?」



そう言うと、ママは手に持っていたものをころころと転がした。



「え……これって?」



出てきたのは、ピアノの鍵盤の模様の布だった。


よく見れば、リモコンのようなものも見えるし、ただの布じゃない。



「ロール型のピアノですって」



ママは、少し楽しそうにそう言った。



「ピアノっていうよりは、キーボードだし、おもちゃに近いとは思うけど……。ないよりはずっといいはずよ」


「どうして、こんなことを……?」
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