2年3組乙女事情
「あなたをリア女に入れようって言ったのは、私なのよ?
あなた達にとってはピンクのスカートだけがリア女の名物なのかもしれないけど、私達親にとっては“修学旅行”も十分にリア女の名物なの」


「確かに……それ、うちのママも言ってた気がする!」


「でしょう?」



思い出したようにそう言った舞花に、ママは満足そうな笑みを見せた。


私は、“修学旅行”が名物だなんて聞いたことがない。

しかも、これまでの言い方だとまるで、ママが修学旅行に行くことを認めてるみたいじゃない?



「でも、ママはいつも、私に料理はしちゃダメって言うでしょ?それは良いの?」


「きちんとしたシェフの方が教えてくださるんでしょう?
芽依は不器用だもの。私は忙しくて付きっきりでお料理を見てあげることができないから、目を離したすきに何をしているかって考えたら危なっかしくて……」



ママは何を想像したのか、大きくため息を吐いた。



「しっかりと見て下さる指導者の方も、クラスのみんなも見ている中での料理なら……。
さすがにあなたが間違った時には、誰かが注意してくれるでしょう?それなら安全なはずだもの」



「そ、そっか……」



行くのを反対されるとばかり思ってた私は、少し拍子抜けした気分になった。

たぶん、それは隣にいる舞花も同じ。



「何?あなた達もう少し喜びなさいよ」



そう言うママも、私達と同じような気持ちなんだろう。



「うん。……嬉しいよ。
私、絶対に今年も修学旅行には行けないんだって思ってて。何か、びっくりしちゃっただけ」



そうだよね。
私、修学旅行に行けるんだよね。





まだまだ湧かない実感に、ちょっとだけ胸がどきどきした。
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