2年3組乙女事情
「え?」



さらっとそう言った杉野さんに、あたしは思わず呟いた。



「だからね、別に良いと思うの。
男の子との交流がなくたって、全然可笑しくないし、何も気まずく思う必要ないよ」



杉野さんは、そのまま自然に話し続けた。



「私ね、よく本を読むでしょ?」


「うん……」


「最近の本の内容は、流行りなのか、いろんなことが低年齢化しすぎてる気がして」


「は、はぁ……」



いきなり始まった本の話に、普段読書なんてしない佐奈やあたしがついていけるわけがない。


でも

床ともベッドとも言えない一点を見つめながら話す杉野さんから、何となく目が離せない。



「別にね、良いの。若い子が、幼い子が何したって。
だって、それはその子達の自由だから……。
でもだからって、低年齢でいろんな経験があることを“当たり前”って言って、そうじゃない人を“恥ずかしい”って感じさせる世の中は変だと思うの」


「何か……一気にグローバルな話になったよね」


「佐奈、グローバルの意味違うから……」


「あ……」



それまで俯いてた杉野さんが

気の抜けた佐奈の顔を見て少し笑う。



「勉強だって、みんな点数も、進度もバラバラでしょう?
それと同じように、恋愛だって、みんな点数も、進度もバラバラで良いの。
違うことが当たり前なんだから、それを恥ずかしがる必要も、後ろめたく思う必要もない」



そう言って、まっすぐにあたしを見てくれた杉野さんの目は

羨ましいくらいに強くて

透き通ってた。
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