2年3組乙女事情
「おはよう。今日もサボりかよ。学校そんなにゆるいわけ?」
「どっちかって言うと厳しいですけど……。でも、まだ目の調子が悪いからってお休みしました」
「お前、こっちきてから1回も走ってねーじゃん」
「……確かに」
ははっと空気みたいな笑いを返す。
そのまま、隣に奥間さんが座った。
いつもの、朝の時間。
いつものジャージ。
……まだ3回目だけど。
それでも、この時間が何故か私の習慣になりつつあるから不思議だ。
結局、早く寝ちゃった一昨日と違って、眠れなかった昨日。
日にちが変わるギリギリに何とか奥間さんにメールをして、今朝も話せるようにお願いした。
でも、お礼なんてどうやってしたら良いのか全く思い浮かばなくて……。
だって、沖縄に住んでる奥間さんに沖縄のお土産を渡すのも変な話だし
だからってここで何か物をプレゼントするのも意味不明だし……
いろいろ考えた結果、こうやってもう1回会って、ちゃんとお礼だけでも言うのがベストってことになって、今に至る。
砂浜に向かいながら横向きに並んで座ってるから、体の片側がアツい。
「目は平気か?昨日よりは開いてるみたいだけど……」
「あ、はい。いただいた目薬、ちゃんと使ってますよ。ほらっ」
ジャージのポケットから目薬を取り出して、にこっと笑う。
「えらいな。もう、コンタクトはずし忘れるなよ」
ぽんっと頭に手を乗せる奥間さん。
あまりにも明るく笑うから、思わず顔に熱が集まった。
もともと開かない目を、ぎゅっと閉じる。
その瞬間、溜まってた涙が一筋溢れた。
「大丈夫か?明日もその調子なら、1回眼科行った方が良いぞ」
「はい。ありがとうございます」
とっさに目を開いて、頭を下げる。
視線だけ奥間さんに向けた。