2年3組乙女事情


「おはよう。今日もサボりかよ。学校そんなにゆるいわけ?」


「どっちかって言うと厳しいですけど……。でも、まだ目の調子が悪いからってお休みしました」


「お前、こっちきてから1回も走ってねーじゃん」


「……確かに」



ははっと空気みたいな笑いを返す。

そのまま、隣に奥間さんが座った。


いつもの、朝の時間。

いつものジャージ。

……まだ3回目だけど。


それでも、この時間が何故か私の習慣になりつつあるから不思議だ。



結局、早く寝ちゃった一昨日と違って、眠れなかった昨日。


日にちが変わるギリギリに何とか奥間さんにメールをして、今朝も話せるようにお願いした。


でも、お礼なんてどうやってしたら良いのか全く思い浮かばなくて……。


だって、沖縄に住んでる奥間さんに沖縄のお土産を渡すのも変な話だし

だからってここで何か物をプレゼントするのも意味不明だし……


いろいろ考えた結果、こうやってもう1回会って、ちゃんとお礼だけでも言うのがベストってことになって、今に至る。



砂浜に向かいながら横向きに並んで座ってるから、体の片側がアツい。



「目は平気か?昨日よりは開いてるみたいだけど……」


「あ、はい。いただいた目薬、ちゃんと使ってますよ。ほらっ」



ジャージのポケットから目薬を取り出して、にこっと笑う。



「えらいな。もう、コンタクトはずし忘れるなよ」



ぽんっと頭に手を乗せる奥間さん。


あまりにも明るく笑うから、思わず顔に熱が集まった。

もともと開かない目を、ぎゅっと閉じる。


その瞬間、溜まってた涙が一筋溢れた。



「大丈夫か?明日もその調子なら、1回眼科行った方が良いぞ」


「はい。ありがとうございます」



とっさに目を開いて、頭を下げる。

視線だけ奥間さんに向けた。
< 84 / 278 >

この作品をシェア

pagetop