2年3組乙女事情
「素敵な編み物ですね。何を作っていらっしゃるんです?」
いつも、親のお客様に見せるのと同じ笑顔を作って
さっきから睨んでくるおばあさんに話し掛けた。
手元には、どっしりと作られた、奇妙な模様の編み物と編み棒がある。
しかも何よ、この毒々しい紫……
趣味悪すぎるんじゃないの?
「こうやって手先を動かすのは良いことなんですってね。先程、こちらの職員の方にお聞きしたんです。
よろしければ、あたしにも教えていただけませんか?」
おばあさんと同じ高さに目線を合わせて、少し首を傾げる。
この角度で微笑めば、みんな言うことを聞いてくれるんだから……。
「うるさい子だね……」
「はい?」
趣味の悪い毛糸の塊をばんっと机の上に投げ出すと、おばあさんがあたしを睨みつけた。
「どうなさったんです?続きは……?」
予想外の反応に戸惑いながら、笑顔を崩さずに言葉を投げた。
腹は立つけど、ここで嫌な表情をして嫌われたら元も子もないもの……。
「まったく……」
おばあさんは、はぁっと大きく溜息を吐くと、机の上に置いてあった湯呑に手を伸ばした。
「……っっ!もうっ……何なのよっ!」
「だ、大丈夫!?舞花!」
「舞花ちゃんっ!」