2年3組乙女事情
敬語を使い忘れたとか、笑顔を作り忘れたとか
そんなことはどうでも良い。
あの後、湯呑みを思いっきりあたしの方向へ傾けたおばあさんのせいで
あたしは中途半端にお茶に濡れた。
中途半端って言っても、髪も顔もしっかり濡れたんだから最悪なんだけど。
学校にも行かなきゃいけないのに、朝から何やってくれるのよっ!
「あんたの言葉も笑顔もいらないよ。どうせ、学校に言われて嫌々来たんだろう」
「どーゆー意味よっ!」
「心がないだろ、あんたの言葉にも、笑顔にも。そんなもん貰うくらいなら、ぶすっと黙ってくれてた方がまだ気分が良い」
「はぁ!?」
ぶすっとしてる方が気分が良いなんて意味がわかんない!
感情を隠さないあたしに、駆け寄っ来てくれた芽依と清夏ちゃんが不安そうな顔を向ける。
「中村さん、とりあえず、落ち着きましょう。藤堂さんも。
そうですね……。あ、布施さん、藤堂さんと一緒に学生控室に移動してもらえますか?後で様子を見に行くから」
「はい。行こう、舞花ちゃん……」
小さく呟いた清夏ちゃんに、おとなしく従う。
ちらっと“中村さん”と呼ばれたおばあさんに視線を送ると、おばあさんはまだ、あたしを強く睨んでいた。
本当、迷惑なんだけど……――――
みんなに背を向けてから、あたしは小さく溜息を吐いた。
全く……何回目よ、今日。