2年3組乙女事情

「本当に最悪……」



夜。


お客様も帰ったし、ご飯も食べたし、お風呂にも入った。

1番リラックスできるはずのこの時間だけど、あたしは昼間のことを思い出してまた溜息を吐いた。



借りたタオルと、着れなくなったジャージを抱えながら聞いた話によると

あの中村さんは相当厄介な性格らしい。



フリーの時間には、誰とも話さないで編み物。

職員さんが話しかけても、ほとんど無視。

送迎の時に家族と会話をする様子も、特になし。



一体、どうやって生活してたらそんな風になるのよ……。



とにかく、あれからあたしは、制服でもできる、掲示物作りの手伝いをした。



明日からはまた、ジャージで予定通りの仕事だって言うから、ちょっと気が重い。


明日からも裏方で良いのに……。



ベッドに入って、ぼーっと天井を眺める。

少し高めの真っ白な天井が、電気を消したせいで真っ黒に見えた。









「誰か、ピアノを弾ける人はいない?」


「ピアノって言ったら小松さんだけど……まだ戻って来てないみたいね」



委員長が、困ったみたいにおばあさんに言葉を返した。



「あ、でも、舞花ちゃんも芽依ちゃんと一緒に習ってたんだよね?前に、2人で話してるとこ聞いたから」


「うん、まぁ……」


「じゃあ、あなたにお願いするわ」


にっこりと微笑んだおばあさんに、あたしは小さく「はい」と答えた。

< 94 / 278 >

この作品をシェア

pagetop