2年3組乙女事情
「本当に最悪……」
夜。
お客様も帰ったし、ご飯も食べたし、お風呂にも入った。
1番リラックスできるはずのこの時間だけど、あたしは昼間のことを思い出してまた溜息を吐いた。
借りたタオルと、着れなくなったジャージを抱えながら聞いた話によると
あの中村さんは相当厄介な性格らしい。
フリーの時間には、誰とも話さないで編み物。
職員さんが話しかけても、ほとんど無視。
送迎の時に家族と会話をする様子も、特になし。
一体、どうやって生活してたらそんな風になるのよ……。
とにかく、あれからあたしは、制服でもできる、掲示物作りの手伝いをした。
明日からはまた、ジャージで予定通りの仕事だって言うから、ちょっと気が重い。
明日からも裏方で良いのに……。
ベッドに入って、ぼーっと天井を眺める。
少し高めの真っ白な天井が、電気を消したせいで真っ黒に見えた。
「誰か、ピアノを弾ける人はいない?」
「ピアノって言ったら小松さんだけど……まだ戻って来てないみたいね」
委員長が、困ったみたいにおばあさんに言葉を返した。
「あ、でも、舞花ちゃんも芽依ちゃんと一緒に習ってたんだよね?前に、2人で話してるとこ聞いたから」
「うん、まぁ……」
「じゃあ、あなたにお願いするわ」
にっこりと微笑んだおばあさんに、あたしは小さく「はい」と答えた。