2年3組乙女事情
本当は、できるなら
こんなところでピアノなんて弾きたくない。
だってあたしのピアノは……―――――
でも、ここで少し弾くくらいなら何とかなる……のかな?
あたしは、軽く溜息をついて小さな黒いピアノと向き合った。
……グランドじゃないのを弾くなんて、久しぶりだわ。
「この曲だけど良いかい?あたし達は、合わせて歌うからさ」
「わかりました」
渡されたのは、割と有名な民謡だった。
これなら、あたしだって聞いたことがある。
それに、楽譜もあんまり難しくない。
「じゃあ、始めますね」
後ろに立つおばあさん達を振り返ってそう言うと、あたしは鍵盤に指を乗せた。
てゆーか、何で中村さんがいるのよ。
コミュニケーション苦手なくせに……――――
あたしは、小さく息を吐いてから、鍵盤を沈めた。
あ、言っとくけど、今のは溜息じゃないわよ?
気合い入れたんだから。
入れたんだけど、ね……。
「そんな演奏じゃ気分が悪い。もう弾かないでくれ」
「はい?」