主婦だって恋をする
カルボナーラ
店の前まで来ると、彼女はすぐさま手を離した。
……ずっと繋いだままでもよかったのにな。
靴選びは彼女が一番安いのください、と言ったから案外早く終わった。
さて。
俺は彼女に向かって微笑む。
「行こっか、メシ」
「…どこのお店?あまり遠くには行きたくないんだけど」
「だいじょーぶ。すぐだから」
そう言って彼女の手を握り、強引に歩き出した。
……目的地は、俺んち。
さっきも手を繋いだからか、彼女も普通に握り返してきて可愛い。
きれいめの服なのに足下はスニーカーってのもアンバランスでそそる。
「……なに?」
…その上目遣い、だめでしょ。
「いや……カルボナーラって好き?」
「……まあ、好きかな」
「よし。じゃ気合い入れて作るから」
「え…?作るって……」
「さ、着いた」
アパートの前まで来ると、俺は彼女が逃げ出さないよう握った手に力を込めた。