主婦だって恋をする

「次も金使わないとこ、行こう?」


「帰らないの?」


「……まだ、帰るのが惜しい。どうせ帰り道の途中だから」



そう言って成美を連れてきたのは、近所の公園。

広めのその場所には、俺たちの他にも何組かの男女がベンチに座っていた。


俺たちもベンチに座り、しばらくただ黙って夜風に吹かれていた。



「……ねぇ」



突然、成美が困った顔をして俺の方を見る。

その理由はすぐに分かった。
後ろの植え込みを挟んだ向こうから、女のただならぬ声が聞こえてきたからだ。


< 107 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop