主婦だって恋をする

「……家を出た!?」



素っ頓狂な祥子の声が、小さなカフェの中にこだまする。



「……うん」



……周囲の視線が痛い。

それに気づいた祥子は声をひそめ、さらに私に質問した。



「……姫島さんと離婚するの?」


「それは、まだわからない……」



祥子は肩をすくめて心底不思議そうな顔をした。



「この間一緒に食事したとき、あんなに仲良さそうだったのに……なんで?」


「それは…………」



ちゃんと言うって決めてきたのに、私はなかなか慶のことを口にすることができない。



「――この間一緒にいた男の子が関係ある?」



私が口を開く前に、祥子が言い当てた。



「……今、一緒に住んでるの」



祥子の目が見れなくて、紅茶の入ったカップに視線を落としたままで、私はそう言った。


< 113 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop