主婦だって恋をする
「……家を出た!?」
素っ頓狂な祥子の声が、小さなカフェの中にこだまする。
「……うん」
……周囲の視線が痛い。
それに気づいた祥子は声をひそめ、さらに私に質問した。
「……姫島さんと離婚するの?」
「それは、まだわからない……」
祥子は肩をすくめて心底不思議そうな顔をした。
「この間一緒に食事したとき、あんなに仲良さそうだったのに……なんで?」
「それは…………」
ちゃんと言うって決めてきたのに、私はなかなか慶のことを口にすることができない。
「――この間一緒にいた男の子が関係ある?」
私が口を開く前に、祥子が言い当てた。
「……今、一緒に住んでるの」
祥子の目が見れなくて、紅茶の入ったカップに視線を落としたままで、私はそう言った。