主婦だって恋をする
「……社員旅行、か」
「うん……行かなきゃだめなのかな」
「仕方ないね……会社関係が絡むと。別居してるなんて知れたら色々大変なのよ」
涌井さんのその言葉には実感がこもっていた。
もしかしたら彼女も似たような経験があるのかもしれない。
「やっぱ俺が我慢するしかないのか……」
最初からわかってたことだけど、そんな簡単に割りきれない。
「好き好きって押しつけるだけが愛じゃないよ。信じて待ってなきゃ」
そっか……最近の俺は押しつけてばっかりかも。
成美が困った顔をする回数も前よりずっと増えた。
「涌井さん、ありがと。彼女のこと……信じる」
俺がお礼を言って立ち上がると、机の上に出ていた彼女の携帯が鳴った。