主婦だって恋をする
俺の言葉を聞きながら、彼女は静かにプルタブを開けた。
そして一口ビールを飲んでため息をつく。
「…好き……今も……」
一筋の涙が頬を伝い、彼女はまた缶に口を付ける。
「俺……酔って泣きつかれても慰められないし、帰るね」
そう言って立ち上がった俺に、涌井さんは泣きながら微笑んだ。
「……ありがと。やっぱり佐久間君に来てもらって良かった」
「あんな芝居はもう嫌だよ」
「下手だったくせに……」
「そんな憎まれ口言えるなら、もう大丈夫だね」
じゃあね、と言って俺は彼女の部屋を後にした。