主婦だって恋をする

「――――ねぇ、そろそろ起きないと間に合わないわ」



翌朝、ソファで眠る夫がなかなか起きないので、肩を揺らしながら呼びかけた。



「………寒い」



うっすら目を開けた彼はそう言って、身体にかけていた薄手の布団に顔の下半分までくるまる。



「寒い……?熱でもあるの?」



手のひらで彼の額に触れてみる。

……熱い。



「体温計どこだったかしら……」



立ち上がろうとする私の腕を、熱で火照った夫の手が掴んだ。



「大丈夫だから……準備してくる」


「準備って……まさか旅行に行くつもり?」



ふらふらと立ち上がった彼は、私の顔を見ないで呟いた。



「……だって、楽しみにしてたんだ」


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