主婦だって恋をする
家に戻った頃には俺は憔悴しきっていた。
外はすっかり暗くなっていたけど、電気もつけずに床に座り込む。
……俺は警察署で、全てを語りはしなかった。
涌井さんは失恋して、あの夜はその相談を受けていたとだけ話し、娘の死を受け入れられない彼女の両親にはただ……頭を下げた。
死んだ娘が不倫していたなんて知っても悲しみが増えるだけだし、相手の男を恨むかもしれない。
不倫だって責任はお互いにある。そのことを一番知ってたのは彼女だ。
それに何より涌井さんは……
両親にそんなこと、知られたくなかったと思うから。
だけど話さなかった分、一人で抱え込まなくちゃならなくて……
俺の心は鉛のように重く沈んでいく。
涌井さんの最後の泣き笑いみたいな表情が、暗い部屋に浮かんでは消える。
後悔と自責の念が次々に押し寄せてきて、ついに耐えられなくなった俺は携帯を取り出して成美に電話をかけた。