主婦だって恋をする
一夜の過ち
三時間ほどバスに揺られて着いたのは、自然に囲まれた温泉地。
「やっぱり空気がおいしいね」
「本当……体の中から浄化される感じ」
緑が映える山々に囲まれたハイキングコースに降りたった私と祥子は、うーんと伸びをして澄んだ空気をたくさん肺に取り込んでいた。
すると不意に、一人の男性社員が声を掛けてきた。
「奥さん、姫島さんが具合悪いみたいなんですけど……」
……ああ、やっぱり。
無理して来たから熱が上がってしまったのかもしれない。
「祥子、ごめんね。他の人と先に行ってて」
私は急いでバスに戻り、開いたままの扉から車内を覗いた。