主婦だって恋をする
「今だけじゃなくて、旅行に来てくれたのも……俺に気を遣ってくれたんだろ?周りに変に思われないように……」
夫の言う通りだった。
でも、謝られるほどのことじゃ
ないと思って私は首を横に振る。
「いいのよ、夫婦なんだから……」
「……成美はまだ、夫婦って思ってくれてるの?」
「だから、ここに居るんじゃない」
「そっか…よかった……」
安心して瞳を閉じた夫は、微笑みに似た表情を浮かべてすうっと眠りに落ちた。
…私の言ったことは本音だった。
家を出た後も、心の奥深い部分で彼とはつながっていると、傲慢にも思っていたから。
「雅志………」
何年も口にしてなかった彼の名を、私は思い出したかのように呟いた。